先週に引き続き、「ピースボート子どもの家」代表の小野寺愛さんに、「子どもの家」のこと、そして今年7月出航予定の30周年記念クルーズについてお話を伺いました。

■“質の高い幼児教育に1ドル投資すれば、あとで社会に7倍のリターンをもたらす”


これは先月、アメリカのオバマ大統領が自身のスピーチの中で、子どもの教育の重要性を訴えた際に述べられた言葉だそうです。実際に近年、多くの国で、幼児教育に力を入れる取り組みが始まっています。

「アメリカの中央銀行にあたる連邦準備制度理事会(FRB)のパーナンキ議長は、ノーベル経済学賞を受賞した経済学者、ジェームス・ヘックマンの説を引用してこう話していました。”幼児期の教育はきわめて重要。幼稚園や保育園で良質な教育を受けることで、貧困が減少し、将来の所得増加や持ち家率が高まる”。

すべてを経済価値におきかえるのもいかがなものか、個人的には疑問もありますが、マリア・モンテッソーリが100年前から訴えていたのも、つまり同じことだと思います。6歳までにどんな環境で過ごすことができるかが、大人が思うよりもずっと大事だということです」

「『子どもの家』では、この時期に”自分でできた!”体験を重ねることを大切にしています。子どもは本来、お手伝いが大好きな存在です。こぼすから私がやるわ、あぶないからやめておきなさいと子どもの挑戦を取り上げることは、実は何の解決にもなりません。こぼしたら拭けばいいと知る必要があるし、どうしたら危なくないかを自分で考える機会も大切です。ただし、大人サイズの雑巾では、当然、上手に絞ることができないから、子どもの手にあった小さな雑巾を用意するのが大人の仕事、ということになります。

子どもの家では、保育中に誰かがお茶をこぼそうものなら、周りの子どもたちが我先にと、小さなサイズの雑巾を持って飛んで来ます。2歳の子どもだって、小さなトレイや低い配膳台など、大人がしっかりとした環境を整えさえすれば、喜んで自分で配膳や片づけをします」

確かに私たち大人は、”子どもだからできない、子どもだからまだ早い”という先入観のもと、子どもと日々接しているような気がします。

「モンテッソーリ教育では、手を使うことを大切にしています。自分で思った通りに手を動かすことができるようになれば、それはそのまま自信へと繋がります。また、手を使いたい、ちぎりたい、はさみを使いたい、縫ってみたい・・・やってみたいときにそれができる環境が整えられていれば、子どもは夢中になって作業をして、満足して、自然に穏やかになり、やがて日常生活全般を自立してできるようになります。」

なるほど、と頷くことばかりです。子どもの成長を応援したければ、まずは親がお手本となり、自ら変わっていかなければならないのですね。

「地球温暖化、広がる格差と政治不信。私たちは課題だらけの時代を生きています。コツコツ努力して暗記し、決められた仕事を遂行する力だけでなく、周囲と対話を重ねながら問題を解決していく力が求められています。でも、それを大学卒業後に突然求めても、子どもだって戸惑います。

幼い頃から人として尊重され、”自分で考え、挑戦する”体験に恵まれていた子どもなら、自然と問題を解決する力が身に付くはずです。問題に直面したとき”どうしてくれるんだ、誰の責任だ”と文句を言うだけでなく、”問題が起こった。では、自分には何ができるか”と自然に考え、動くことができる人を、大人社会全体で大事に育みたいですね」

■平和は子育てからはじまる。


「幼児期に多くの価値観に触れ、多様性の中で育てられた子どもは、大らかに育ちます。その時期に世界を旅するということは、記憶には残らないかもしれない。でも、世界にはたくさんの人がいて、それぞれ食べものも言葉も違うけれど、どこへ行っても自分は歓迎された、という喜びは、生涯自分のなかに残ります。

この世界はいいところだ、という基本的な信頼感を体験から得ている子どもたちはきっと、自分とは異なるものに出会ったときに想像力を働かせ、寄り添う心を持つことができる人に育っていくのではないでしょうか。」

「私自身、自分の子育てを考えた時、子どもに何を”教える”ことができるかと問うてみれば、実はほとんど何もないことに気がつきます。今の子どもたちが30歳になったときに何が必要なのかを考えてみたとき、実は親である自分にも、25年後の世界など想像することができていないことにハッとするんです。たとえば、今の時代に重宝されている学歴やITスキルなど、もしかしたら未来社会ではまったく役に立たないかもしれない。

であれば、親として子どもに伝えられることはほんの少しだけしかありません。世界のどこにいて何をしていても、自分を肯定できる力、そして、自分と異なるものをもしっかり理解でき、それに寄り添うことができる力。つまり、自己肯定力、想像力、他者に寄り添う心くらいしか、伝えるべきものなどないのかな、と思うのです。それがきっと何より確かな子どもの力となり、25年後にむけた社会貢献でもあると考えています」

問題が山積みの現代。これからの未来を生きて行く子どもたち。ひとりの大人として、親として、何ができるのかと考えるといつも答えは見つからず、堂々巡りになってしまいます。けれども今回の小野寺さんのお話から、幼児期の子どもとしっかり向き合い、自分自身も毎日を丁寧に過ごしていれば、未来は明るいのかもしれない、と思いました。

■30周年を記念したイベント満載のクルーズ。


2013年7月に出航する第80回クルーズは、ピースボート30周年の記念クルーズでもあります。アジアをスタートし、魅惑的な中東を抜け、太陽の光が降り注ぐ地中海へ。そして後半は、手つかずの自然と陽気なリズムが魅力的の中南米地域へと進みます。
寄港地はもちろんのこと、船の上でも興味深いプログラムが満載です。

特筆すべきは、「エル・システマ」(“子どもを犯罪から救い、社会の発展に寄与する”を合言葉に南米ベネズエラで社会政策の一環として全国的に展開されている音楽教育システム)で音楽家となった若者たちと、福島の高校生オーケストラたちの船上交流。また、「核のない世界」を目指し、広島・長崎の被爆者の方々が乗船し、訪れる各寄港地で被爆体験を証言しながらクルーズをしていきます。

そしてこのクルーズの最終地は、宮城県石巻市。ピースボートでこれまでのべ7万人以上のボランティアを派遣し、今も支援し続けている被災地の現状を世界に伝え、応援メッセージを携えて帰国します。被災地の真実と教訓を世界に伝えると共に、世界からの応援メッセージを持って石巻に入港します。ゲスト講師や留学生として30~40名ほどの方々が国内外から乗船されるということも圧巻です。

これぞまさに船上大学ですね。大人になってから勉強することは、学生時代とはまた違った心持ちで自分と向き合えるもの。純粋に船旅を楽しみたい方はもちろん、様々なジャンルのことを学びたい方にはもってこいの内容です。この夏、思い切って地球一周するのも、生涯忘れられない思い出に、そして一生の宝物になることでしょう。

「ピースボート」に興味を持って下さった方、もっと知りたいという方にお知らせです。

2013年3月30日(土)横浜港大さん橋で、客船オーシャンドリーム号を実際に見学することができます。当日、船内では様々なイベントが企画されており、「ピースボート流・船内生活」をプチ体験できます。また、今回ご紹介した「ピースボート子どもの家」関連のイベントも開催されるので、お子さま連れの方も楽しめます。どちらも事前予約が必要となりますので、ご興味のある方はお早めにお申し込み下さいね。

※前回記事でもお伝えした通り、申し込み期限は、明日3/21(木)までになります。掲載の都合上、直近となり申し訳ありませんが、ご了承ください。

 

客船オーシャンドリーム号 船内見学会

日時:2013年3月30日(土) 10:00~16:00
受付場所:横浜港大さん橋国際客船ターミナル
アクセス:みなとみらい線「日本大通り駅」徒歩10分