当ページ「横浜の女性のためのWEBマガジンHaMaWo」の【HaMaWo】とは、「Yokohama Woman」の略です。この企画では、HaMaWo編集部が考えるHaMaWo像というべき女性にインタビュー。その女性にクローズアップして人物像に迫ります。

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これからの日本社会を支える女性企業家の方々(これから起業したい方も含め)を対象に開催された「横浜ウーマンビジネスフェスタ2014」。

女子企業家によるブース出展などをはじめ、交流会や特別講演会など様々なイベントが催されるなか、「CHEER!」と呼ばれる女性企業家によるプレゼンテーションに注目が集まりました。事前審査で選ばれた9人の企業家がステージ上で、新たな事業計画をプレゼン。想像力豊かなアイデアと女性ならではの視点に裏打ちされた、新たなビジネスモデルやサービス内容とは?

今回はそのうちの1人、東日本大震災後、被災地でのカフェコンサート開催をスタートし、2013年には音楽とアートで人と地域を繋ぐNPO法人を立ち上げた厚地美香子さんにお話をお伺いしました。

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東日本大震災後、被災地でのカフェコンサート開催をスタートし、2013年には音楽とアートで人と地域を繋ぐNPO法人を立ち上げた厚地美香子さん。厚地さんが音楽とアートで広げていきたい活動について、そして仕事と子育ての両立についてお話をお聞きしました。

●ピアノ練習に明け暮れた音大時代を経て、音楽マネジメント会社に就職

音大でピアノを専攻していた厚地さん。練習に明け暮れながらも、想像していた世界とのギャップを感じる日々を過ごしていたそう。

「みんなで音を合わせて楽しむことが好きだった私が、音大に入ってまず驚いたのは、アンサンブル(合奏)を楽しむという気風がなかったこと。私の思い描いていたイメージと違うな、もっと音楽を楽しめたらいいのに…と感じていました。しだいに漠然と、“将来、若い音楽家を支援する仕事がしたい”と思い始めたのです。でも、そのために何をしたらいいのかは、まったくわかりませんでした」

その後、クラッシックコンサートのマネジメントを行う会社に就職。会社員時代の20年間は、とてもハードだったといいます。

「就職先は、クラッシック専門の大手音楽事務所。チケットセンターでの勤務後に配属されたのは、セールス部門でした。チケットを売り込むため、音楽業界だけでなく経済界のトップの方々とお話する機会もありました。当時、クラシック業界は男性優位社会だったので、その中に音大出の女の子が飛び込んだわけですから、相当鍛えられましたね」

●結婚、出産。そして復帰後はさらに多忙な日々へ

そんな忙しい毎日を送る中で、高校の同級生だったご主人と結婚し、第一子の男の子を出産。育休後に異動した部署では、なんと出産前よりも忙しい日々を送ることになります。

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「さらに忙しいマネージメント部門に異動してからは、CMの撮影現場や海外の公演にも同行しました。だから、私が家にいないのが当たり前、という状態。そのかわりに夫が異動願いを出し、子どもの面倒をみる時間を作ってくれました。

第二子の女の子を出産したときも産休後すぐに復帰し、メンバーが男性ばかりの営業部門に配属されました。日本全国を飛び回る生活に加え、アーティストの要求は高く、その一方でクラシックを知らない人に聴いてもらわなければならない。そんな忙しさと理想と現実のギャップが次第にストレスになり、起業を決意。2010年に会社を退職しました」

●被災地でのボランティアの経験をきっかけに、NPO法人での起業を決意

これまでの実績から、退職後も横浜市や神奈川県などの芸術イベントの委託を受けた厚地さん。その後ものんびりとはいかず、フリーで仕事をしながらも起業スクールに通う日々を送ります。そんな中、東日本大震災が発生。なんと厚地さん、震災後5か月で被災地・宮城でのカフェ・コンサートを始めます。

2011年宮城県被災地でのカフェ・コンサートの様子
「知人から『被災地には音楽であなたができることがたくさんあるわよ!』と言われ、初めて宮城を訪れたのが2011年8月でした。具体的に何ができるのかわかりませんでしたが、とにかく被災地の人とお友達になって、私が楽しめること、そして少しでも楽しんでもらえることをやりたい、という気持ちで手作りのケーキとコーヒーを車に積んで、カフェ・コンサートを開きました。

被災地の方はもちろん、そこで働いているスタッフの方たちにもとても喜んでもらえて。試行錯誤しながらも、現在まで月に1度のカフェ・コンサートを続けています。演奏は主に若いアーティストが担当してくれているのですが、クラッシックが初めてという方に、いかにわかりやすく、楽しくお届けするかという点で、とても勉強になっているようです。時には黄色い声援が飛ぶこともあるんですよ(笑)」

その後、この被災地でのボランティア活動をきっかけに、会社ではなくNPO法人という方法で起業することを選びます。

「利益より人の心に寄り添いたいという気持ちが強かったこと、そして自分の住む横浜という街に根付いた活動をしたいという理由から、『NPO法人あっちこっち』を設立しました。活動の大きな柱は、1.芸術を必要としている方々へ届けること、2.若手アーティストの活躍の場を作ること、3.社会貢献での国際交流事業の3つです。これまでにKAAT神奈川芸術劇場で音楽とアート、ダンスをいっぺんに楽しめる子どものためのワークショップを年に1度開催し、子どもが生の芸術を体験できる場として、また若手アーティストの発信の場として、回を重ねるごとに好評をいただいています」

そして厚地さんが最も力を入れている活動が、地域の介護施設で開催するカフェ・コンサート。お菓子作りが趣味の厚地さんは、自らお菓子を作り、コーヒーの準備をして会場に向かいます。介護施設の職員に負担がかからないよう、チラシ作りから会場設営、片付けまで一手に引き受けるのだそう。

2014年宮城県カフェ・コンサートの集合写真
「私自身、歳を重ねたときに楽しく過ごしていたいという思いが強いんです。介護施設で開催している<絆カフェ・コンサート>は、お菓子とコーヒーでくつろぎながら、入居者の方はもちろん、家族や地域の人も気軽に参加できる、本格的なクラシック出張コンサートです。老後をこんなふうに楽しく過ごせたらいいな、という自分の想いをカタチにしています」

「あっちこっち」という名前は、フットワークの軽い厚地さんらしい素敵なネーミングですね。メンバーは学生時代の友人や会社員時代にお世話になった方々、ママ友などさまざまで、全員家庭を持つ女性ばかり。みなさん家庭を大事にしながら活動を続けています。

「起業してからは、何より子どもたちとかかわる時間が増えたことが嬉しいですね。上の子はもう高校生なので誘っても来ないことが多いのですが、下の娘は被災地でのコンサートにも一緒に行くなど、いろいろな経験を共有しています」

また2014年11月に開催された『横浜ウーマンビジネスフェスタ』(主催:横浜市ほか)では、女性起業家による プレゼンテーションプログラム「CHEER!(チア)」に登壇。出張カフェ・コンサートへの熱い思いを来場した多くの女性に発信しました。

●女性であることを楽しむには、「自分の幸せを大切に」

そんな厚地さんのこれからの夢をお聞きしたところ、ビックリするような答えが返ってきました。

2014年被災地へお菓子を届ける会にて
「私の夢は、『NPO法人あっちこっちを解散すること』。え!なぜ?ってよく聞かれるのですが、私たちの活動が当たり前の世の中になることが目標なんです。私の手から離れてもちゃんと機能する仕組みができたらいいなと思っています」

発足から4年目となる今年は、社会貢献のための国際交流事業にも力を入れようと、南三陸町の小学校でオーストラリアの劇場とコラボしたアートプロジェクトの開催も予定しているそう。思ったらどんどん突き進む厚地さん、とってもパワフルですね! 最後に、読者のみなさんへのメッセージをお聞きしました。

「私が好きな言葉は『Every wall is a door』。これからもたくさんの壁にぶち当たると思いますが、「すべての壁は、新しい出会いのためのドアである」という気持ちで人生を楽しんでいきたいと思っています。

起業って、やっぱり大変です。私はそれが自分の人生と直結していますが、誰もが起業を目指す必要はないと思っています。まずは、自分の幸せを大切に! それが家族の幸せにつながるのだと思っています。無理をせず、女性であることをおおいに楽しみましょう!」

 

厚地 美香子(あつち みかこ)

音楽マネジメント会社に20年間勤務後、音楽とアートで笑顔を増やす活動を行う「NPO法人あっちこっち」を設立。約20年、中区に在住。国際交流事業のために着付けやお茶をたしなむ一方、休日には家族とリラックスして過ごす。「馬のいる根岸森林公園や山手の洋館、みなとみらいの夜景、いろんな人が混沌としている関外(野毛・伊勢佐木町方面)地区…。ここでたくさんの素敵な人たちに出会いました。横浜から離れられません!」という横浜大好きウーマン。

NPO法人 あっちこっち